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固定残業代とは?(2)残業代がもとでトラブルになった事例

固定残業代とは?(1)固定残業代のメリット・デメリット
固定残業代とは?(2)残業代がもとでトラブルになった事例
固定残業代とは?(3)固定残業代制度の導入方法

使用者、労働者の間で起きるもめごとは、だいたい3通りに分けることができます。
一つは「不当解雇」そして二つ目は「ハラスメント」そして最後に「未払い残業代の請求」。労働審判における申し立てもほぼこの3通りです。前回に引き続き、テーマは固定残業代と未払い賃金について、実際にあった事例をもとにお話ししたいと思います。

残業代が原因で起きた未払い賃金トラブル

小里機材事件
【会社側の主張】
もともと時間外労働に対する割増賃金が一律で基本給に含める合意があった。割増される賃金の中に、残業代はもちろん、深夜手当、15時間を超過した場合の労基法上の割増手当ても含まれていることを主張していいた。
【裁判所の判断】
裁判所は、「既定の労働時間・残業時間・超過した残業時間の区分が困難」であること、さらに「労使間の合意があったとしても割り増しされた区分が明確でない以上、そのすべてを放棄したとは言えない」とし、くわえて「就業規則や賃金規定等に記載がない」ことをもって、未払い賃金と認定し、未払いとされる賃金について支払いを命じる判断をしました。
この判決では直接、固定残業代に言及したわけではありませんが、固定残業代の基準となる「通常の就業時間、残業時間、そして残業代を明確にすること」及び「就業規則や賃金規定等で従業員への周知」を是認した判決となっています。逆をいうと「通常の就業時間と残業時間などを明確に分ける」「就業規則等に定めて周知する」ことで、固定残業代として認められると考えられており、制度導入のためのモデルケースとなっています。

アンティリンク判決
【企業の主張】
月30時間分の手当てを「営業手当」として支給していた。これをもって「固定残業代」として、全ての賃金は支払い済みであるという主張をした。
【裁判所の判断】
小里機材事件における「従業員への周知」は、賃金規定で定められていたのでクリアしています。一方で以下の2点の判断基準を示すこととなった判決となります。
1.実質的にその手当てが時間外労働の対価としての性格を有していること。
2.支給時に支給対象の時間外労働の時間数と、残業手当の額が労働者に明示され、定額残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途清算する旨の合意が存在するか、少なくともそうした取扱いが確立していること。
本件においては、営業手当には営業活動にかかる経費をまかなう趣旨が含まれていたこと、そして営業手当以外に別の手当てが支払われていないことから、営業手当は残業手当の性質を有していないと判断されることとなりました。会社の主張は全面的に退けられ、支払い済みの手当て全額が残業代とは認められず、支払い済みの営業手当とは全く別に、残業代の支払いが命じられる判決となりました。

テックジャパン判決
【概要】
1ヶ月あたり140時間と180時間労働の給与規定があり、例えば140時間を20時間超えた160時間働いた場合、140時間分の賃金のみを基本給として支払うことを合意して採用した。原告は既定の割増賃金を払う義務があるとして、訴えを起こした。
【裁判所の判断】
本件では、残業代と基本給を分別せず基本給として全額を支給していたこと。また、合意によって割増賃金の請求を放棄したとみなすことができる明確な意思表示がなかったこと。さらに、労働時間が大きく変動するにもかかわらず、労働者が事前に時間外手当を放棄したみなすことはできないということ。これらをもって、会社側に時間外労働に対する賃金の支払いを命じました。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル判決
【概要】
95時間の定額残業代を労働条件確認書に規定していた。深夜割増手当に関する規定がなく、95時間を超える残業代は支払われていなかった。
【裁判所の判断】
労働基準法36条の労働時間に関する規定に背くだけでなく、安全配慮義務の違反、公序良俗に反するおそれさえあるとし、月45時間を超える規定については無効とした。

ここで注視したいことが「月45時間」までは残業代として認められたというところ。これまで判旨に沿って考えるならば、最初から95時間を超える残業代を認めない取り決めだと、残業代としての性質を認めなかったとしてもおかしくありません。いくつか考えられるものの、労働条件確認書に記載があり、署名捺印もあったことから、固定残業代を何で定めるか、その周知方法についても注意が必要であるということが分かります。

まとめ
テックジャパン判決における営業手当と残業代の考え方については、多くの企業で似たケースがあると推測されています。一意的に認められないわけではありませんが、原則的に、営業手当と残業代を労働者が分けて認識できる状態であることが求められるので注意しましょう。

固定残業代と休日出勤手当・深夜手当
「休日出勤と深夜手当を固定残業代に含めることができるのか?」
別々の制度なので、それぞれ別に規定することをおススメします。含めて規定することも出来ますが、通常の固定残業代に深夜時間割増賃金、休日出勤の割増賃金を上乗せする必要があります。

「辞めた労働者から、未払い賃金を支払うよう求められた。規定に従って残業代を支給していたのに。。」このような相談を受けることは少なくありません。必ずしもではありませんが、もし弁護士から連絡があった場合、およそ勝算があって連絡してくるケースが多いように見受けられます。
これから固定残業代制度を取り入れる方はもちろん、すでに就業規定にあったとしても油断せず、現在の法令を遵守しているか見直してみるのもいいかもしれません。

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