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人事労務相談 2023/01/26 あっせんとは|個別労働紛争のあっせん事例
個別労働紛争のあっせんとは、会社と従業員の間で労働紛争がある場合に、弁護士や特定社労士などの労働問題の専門家が第三者として介入し、双方の主張を聞きながら調整して話し合いを促進、当事者間の紛争を解決していく制度をいいます。
裁判や労働審判と違い、費用は原則無料、また審判や判決といった白黒はっきりさせるようなものではなく、両者の間で落としどころを探るような制度という位置づけになっています。
労働局からあっせんの通知が会社に届くと必ず開催されるというものではありませんが、裁判まで発展することもしばしば。残業代といった未払い賃金の請求を専門とする弁護士も多くいますので、使用者であれば放置しないほうが良いでしょう。
あっせんについてはInstagramで簡単にまとめていますので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。
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あっせん事例
今回は、あっせんについてケーススタディです
【ケース1】
労働者Yは管理職として勤務していた。Yは病気療養のため約1か月間休業して勤務に復帰したが、管理職から一般職として降格処分、合わせて賃金の引き下げを通告された。賃金引き下げの理由として、職場復帰後の欠勤の多さが指摘された。よって労働者Yは、当月の末日をもって退職した。その後、Yは賃金引下げに納得できないとして、引き下げの支払いを求めて労働局にあっせんを申し入れた。
会社側の主張
「Yの賃金には管理職手当が含まれていた。しかし復職後は欠勤が多く、管理職でありながら取引先やほかの従業員とのコミュニケーション不全におちいってしまった。従って管理職から降格を通告し、賃金も一般職相当とした。合わせて本人からの反論も無かったため、本処分には妥当性がある。」と主張した。
あっせん結果について
合意の内容「会社側が引き下げ分の全額を支払う」
賃金の引き下げ等、労働条件の不利益な変更については、労使間の合意があって初めて成立するものです。しかし本件では反論は無かったかもしれませんが、逆にいうと明確な同意もなかったということができます。このことから会社側には譲歩を求め、これを受け入れたという結果になりました。
あっせんは審判や裁判と違って、明確な書証(証拠となる書類)がなくても、和解となることが少なからずあります。とは言え証拠があれば、労働局や委員会に与える心証が違ってくるのは当然です。今回のケースで会社側に求められたことは、同意があったかという客観性で、反論が無かったから同意したという主張は弱かったと判断されました。
会社側に、就業規則等での定めや退職合意書などの準備があり、労働者Yからの退職の合意を得ていたら、結果は違っていたかもしれません。もしかしたらあっせんの申請があったとき、それらの書証とともに説明をすることで、あっせんに至らなかった可能性があります。
円満退職と退職合意書についてはこちらでも紹介しています
円満退職と退職合意書
【ケース2】
労働者Zは、会社から与えられたノルマを達成することができそうにない、あるいはできなかった、それらが理由で精神的に追い込まれて外出困難になった。そのためZは、会社にルールの変更と休職を申し出たが、その両方が認められなかった。そこでZは本件が落ち着くまでの間、有給休暇を申請した。さらに有給休暇を全て消化した後は、結果的に無断欠勤を続けることになった。会社側は無断欠勤を理由に懲戒解雇とした。Zはこれを不服とし、処分の無効と撤回を求めた。
会社側の主張
「労働者Zがノルマを達成できていないとしても、それを理由にけん責や訓告はもちろん、ハラスメント的な行為は一切行っていない。また、休職についての決まりはない。したがって、懲戒処分については就業規則にある「正当な事由なく14日以上の無断欠勤」があった場合に該当し有効である。撤回するつもりはない。」と主張した。
合意の内容「懲戒解雇を撤回し、心療内科等の受診を行わせ、その診療結果に応じて再処分する」
欠勤の理由が業務遂行による精神的な不調だという可能性を全く考慮せず、健康診断の実施や病院などの受診を勧めるといった処置を、会社は提示できたにも関わらずしませんでした。さらに休職等の処分を検討もせず、直ちに懲戒処分を行ったことは適切な対応とはいえないといった理由で、会社側に譲歩を求める判断となりました。
さてこのケースでは、会社に休職制度があればどうだったでしょうか。健康上の理由なので、結果Zは職を辞すことになるかもしれませんが、あっせんなど紛争解決のための手段に及ばなかった可能性があります。就業規則で「休職期間満了後、復職できない場合は休職期間満了日をもって自動的に退職とする(自動退職)」の条項を盛り込むことは適法だからです。
休職とは?メリット・デメリット。就業規則について。|人事労務相談
まとめ
いかがでしたでしょう。ケーススタディと似たようなことはどの企業にも起こり得ます。
そして内容は専門性が強く、経営者マインドでは納得できないこともあれば、労働者視点から当然と考えられることもあります。労働に関する紛争を完全に無くすことはできないかもしれませんが、でき得る準備をしておくことは、会社側にとっても労働者にとっても利益があることだと私たちは考えています。
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