ブログ
人事労務相談 2022/03/10 従業員が退職するときのトラブル
2020年以降、転職者は減少傾向にありますが、これはコロナ禍による影響と考えられています。
総務省によると、コロナ禍になるまで、転職する労働者は増加の傾向にありました。2019年には転職者が351万人にのぼり、労働者総数に対し5.2%でしたが、2020以降減少し、2021年には転職者数288万人、労働者総数に対し4.3%となったことが分かっています。転職者の減少は、コロナウイルスによる労働市場の減少と、多くの企業が雇用維持を優先したことによって、不安定な情勢で労働者が転職を敬遠したことが要因と考えられています。
そして2022年、日本経済はコロナ禍から少しずつ上向き傾向にあります。オミクロン株の影響により後ろにずれ込んでいるものの、在宅ワークなど労働環境も多様化などもあり、今後は労働市場も回復していくでしょう。昨年一昨年と減速した転職市場も、以降は加速していくと考えられます。
転職市場が加速する、それはあなたの会社にとってマイナスにもプラスにもなるでしょう。
「いきなり従業員が辞めてしまった。。。」
従業員がやめるだけでもマイナスなのに、それがいきなり辞めてしまったりしてしまうと、会社にとって損失でしかありません。
他方、労働基準法は、原則的に労働者の権利を守るために作られた法律なので、いきなり辞めてしまう労働者の権利も当然保護されます。これは、使用者が労働者に対し強い立場でいることと、中小企業では労務管理に関する法令知識が十分に知られていないことが理由とされています。
今回は、従業員が退職するときのトラブルあるあるについてお話しです。
退職する者が業務上の引継ぎもせず有給消化を申し出た
【相談内容】
退職願が提出されたのが1ケ月前、さらに有給が残っていたので、合わせて有休の申し出がありました。20日間の有休が残っていたため、退職までほとんど出勤することがなくなり、引継ぎ業務がままなりません。こういった場合の申し出も、そのまま受け入れなくてはならないのでしょうか?
【対応】
労働基準法39条は年次有給休暇について定めています。労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨のもと、原則的に労働者は有休を自由に取得することができます。ただし同条5項但書では、「事業の正常な運営を妨げる場合」に、「年次有給休暇の時季変更権を行使できる」とあります。他方、有給休暇と退職日の変更について、「労働者の解雇予定日をこえての時季変更は行えない(基収第5554号)」ともしています。
今回のケースでは、引継ぎ業務がままならない事態になったとしても、労働者に対し時季変更を要求することは困難です。損害賠償を請求する余地は残されてるとはいえ、その申請が「事業の正常な運営を妨げる」状況であるなら、損害賠償を請求するより先にすべきことがあるはずです。
実際このような相談は少なくありません。会社側としては、就業規則や雇用契約書で、あらかじめ退職時の引継ぎになどついてルール化し、懲戒処分などを規定しておくことをおススメします。
退職する者が有休の買い取りを求めてきた
【相談内容】
規則に従って退職する者が、残っている年次有給休暇を買い取るよう求めてきました。これに応える必要はありますか?
【対応】
有給休暇の買い取りについて、法律的な定めはありません。前述の通り、労働者の疲労回復、労働力の維持培養、ゆとりある生活の実現といった趣旨のもと作られた制度にもかかわらず、買い取りを認めることで、労働者にとって不利益な状況が生じかねないと考えられているからです。
今回のケースでは、有給の買い取りを求められても、原則的に会社は拒否することができます。
例外的に、労働者にとって不利益とならないときは、有給の買い取りが認められているので、ケースバイケースで話し合うこともできます。
有休の買い取りが認められるケース
①退職時に残っている有休
②時効消滅(2年)した有休
③法令以上に規定された有休
話が前後してしまいましたが、前述の「退職する者が業務上の引継ぎもせず有給消化を申し出た」場合に、もし退職する者と話し合う余地があるならば、できるだけ引継ぎ業務を行ってもらい、消化できなかった有休を買い上げるといった手段をとることも可能でした。「労働者の退職によって権利が消滅するような場合に、残日数に応じて調整的に金銭の給付をする」ならば、法令に違反するものではないと解されているからです。
同様に、時効消滅した有休の買い取りは問題ありませんし、法令で定められた以上の有休の買い取りも、年次有給休暇という趣旨に反するとは考えられていないのです。
繰り返しになりますが、有休の買い取りについて、法的な定めがありません。後々トラブルにならないよう、あらかじめ就業規則等で明示しておくことをおススメします。
退職代行の会社から申し入れがあった
【相談内容】
退職代行の会社からの「自己都合で退職します」という申し入れがありました。これをもって退職を承認しなくてはならないのでしょうか?
【対応】
原則論として(※1)、退職は労働者の一方的な意思表示があれば成立し、退職が本人の意思であれば、それをもって手続きを進めることとなります。民法では期間の定めのない労働契約の解除について、申し入れのあった日から2週間を経過すると契約は終了するとしています(民法627条1項)。
よって、まずは代行会社に「本人の意思」に基づいた申し入れなのか確認しましょう。本人名義の退職届が代行会社によって提出されたとき、仮に「本人に連絡することは望まない」と申し出があったとしても、郵便・電話・メール等で確認することは問題ありません(※退職代行が弁護士資格を持っている場合は法定代理人にあたります)。どちらにせよ本人の意思が確認されたならば、粛々と処理することが望ましいといえます。
(※1)合意解約の申し込みとしての退職願の場合、退職の効果は会社の承認によって発生するという判断もあります(最判昭62.9.18労判504-6)。このときは、労働者の利益に資する場合の判断であり、今回の「退職代行の会社からの申し入れ」というケースではあてはまらないと考えられます。
初回ご相談無料
お問い合わせ・ご相談は
こちらから
初回のご相談は無料です。
人事労務・助成金申請等でお困り事がございましたらお気軽にご連絡ください。
全国からZoomを利用した
オンライン相談も可能です。
-
お電話でのお問い合わせ
03-6907-3897【営業時間】平日 10:00~18:00
-
お問い合わせフォーム
メールでのお問い合わせ24時間受付中